統合失調症で起こる記憶障害とは?症状と回復例について
2017/06/20
統合失調症と記憶力について
極めて後天性の精神障害としては、非常に一般的に知られたものが統合失調症です。
しかしながら、後天性としての環境は、普通の人であれば誰でも統合失調症になるわけではありません。
しかしそれでも、厚生労働省調べでは平成23年時点で300万人を超え、320万人ですから少ない数ではありません。
統合失調症の特徴は、複数の事柄が同時に進行しているようなケースで、それぞれを順番に取捨選択しながら、優先順位や集中力を使うことが出来なくなる精神障害です。
原因は不明でも、その経緯は、少しずつ解明され始めています。
例えば「妄想」ですが、これは「誰かが私を騙そうとしている。」
とか、物が見つからないのは、「誰がかが盗んでいるし、私は監視もされている。」といった思い込みです。
こうした思考は、集中力が無ければ普通は気にしない程度の、小さな事がきっかけになっています。
統合失調症がもし、普通の人の様にうっかり忘れたというのが頻繁なら、妄想や脅迫観念によって苦しむことは少ないと言えるのではないでしょうか?
しかし一方でそうした観念や妄想といった、統合失調症独特の考え方が頭の中で埋め尽くされた場合、日常生活の大事な部分が、記憶できない可能性は高くなります。
つまり一次記憶の喪失ですね。
何気に置いたペンや書類が、目の前にあっても「見つからない」となるような場合です。
スポンサーリンク
記憶障害の種類
精神障害と記憶障害というのは、かなり関係が深いもので、統合失調症の場合は脳の中の神経中枢の仕組みが、普通の人とは違った印象があります。
統合失調症は遺伝的な要素は、一部ではあるものの、一卵性双生児などの場合は、一方は統合失調症になっても、片方はならない場合もあります。
本来なら遺伝なら共通の障害を持つと考えられることから、統合失調症はその生育過程で、脳機能に未熟かあるいは何らかの欠陥が認められるのではないか、といった学者の意見もあります。
非常に発生頻度が先進国で高い事から、厚労省でも糖尿病や高血圧と近いとして、慢性化しやすい要素がある点は、体質に近いものです。
つまり、脳機能に何らかの発育で問題が残ったまま成長したとも言えます。元々の好みが偏食とか大食漢とかありますよね。
その延長上に慢性疾患がありますから、統合失調症などの精神障害もまた、脳機能障害による独特の思考性があるというわけです。
記憶障害の種類は、大きく分けて2つあります。一時記憶障害は誰にでも起こる、突発的なものから、継続的に長い期間記憶障害が残るケースがあります。
もう一つは認知症に見られる、記憶自体が脳の損傷や、病気の進行によって脳神経にダメージを受けるケースです。
こちらは長い間記憶障害が続く点は、一次記憶障害と一部同じですが、完全に記憶が消える、または新しい記憶を格納できないといった違いがあります。
精神障害では、こうした恒久的な記憶喪失は起りません。
一次記憶障害の認知とは、「忘れてしまった」事は覚えているわけですから、物事は認知していることになります。
一方で認知障害の最たる認知症の場合は、一次記憶ですら出来ない場合があります。
夕食を一緒にしてお腹一杯食べたのに、本人は「私は何も食べてない」という場合などがあるのです。
認知症は進行性が多いため、記憶欠損と一次記憶障害が同時に進行することがあります。
一方で一時記憶障害だけの場合は、訓練で認知の度合いをあげたり、きちんと物の置き場や行動に関してメモや記録をしておけば、必ず思い出せるのが特徴です。
精神障害では、この一時記憶障害が最も多いですね。
睡眠や疲労回復が難しい「脳機能の障害」ですから、ちょっとしたことを覚えられないというのはよくあることです。
一次記憶障害と認知症に近い記憶障害
ちなみに認知症の症状と、統合失調症の症状は非常に近いものがあります。
妄想、虚言などは進行した認知症ではよく見られるからです。
ただし、日常生活に支障が伴うとしても、回復が統合失調症に比べると非常に難しく、脳機能そのものが壊死、あるいは神経が機能しなくなる点は、認知症独特の特徴です。
認知症は脳の精密検査で判明することがありますが、統合失調症は脳神経自体は正常で、”繋がり”に何らかの障害を持ついった認知機能の違いがあります。
健忘症と記憶障害の違い
「忘れっぽい人」というのは、健忘症と呼ばれていますが、これは精神障害ではありません。
高齢にならなくても、人の行動には「やりやすい事」と「不得意な事」があるように、人によって物事を行う順番が違います。
例えば、「買い物をしてお釣りをもらう」という行為は、普通の人でもこの行動はなかなか忘れないものです。
しかし、銀行ATMで雨の日に言行って、傘を忘れることは誰にでもあります。
これは店に入る時は雨が降っていても、出てきたら止んでいた場合、野外には傘をさす人はいないとしたら、傘といった存在を忘れるということは誰にでもあるのです。
健忘症というのは病気ではありません。あくまで「健忘」といった、状態を表したものです。
一方で記憶障害とは、認知において「健忘」がある時顕著になって表れます。
例えば、一度に複数の事をしなくてはならない時です。例えばテレビを見ながら、ガスレンジでお湯を沸かしているとします。
そこへ電話がかかって用件を聞き、お湯が沸いたのでポットに入れたとします。これはすべて順番に起こっていますよね。
そして次に外出しようと考えます。そしてガスの元栓を閉めて、外出の準備を行い玄関へ向かい外に出ます。
その時、「ガスの元栓」が頭に浮かびます。もう一度部屋に戻って確認し、元栓が閉まってることを確認します。
しかし外出する際、「確かに閉めたはずなのに、なぜ確認するんだろう」という疑問がわいてきます。
もしかしたら、最初は閉めてなかったのかなと、ここでもう一度確認します。
普通であれば、お湯を沸かすためにはガス栓を開けるが、最後は閉めるという動作が無くても、火は消えているはずです。
ガスの元栓が締まってないのは心配だったとしても、今すぐ火事になる危険性はありません。
しかし統合失調症の場合は、「ガスの元栓」というやり残したことだけが強く頭に記憶され、最初に閉めたことを忘れるのです。
これは統合失調症によくある、強迫観念の特徴です。一種の神経症ですね。
心身症が酷い人も、こうした些細な事が「後に重大な事に繋がる」と神経をとがらせ、何度も確認する場合があります。
ある種自分の記憶自体に自信を持てないという点ですね。
スポンサーリンク
なぜ統合失調症に記憶障害が起こるか?
統合失調症とは、複数の同時進行する流れや行動を整理し、順番通りに出来ない、整理できない特徴があります。
そこに強迫観念や行動の未達成を他人から非難されたり、何度も指摘や指導、あるいは訂正を繰り返され、混乱していく精神障害です。
妄想や幻覚は、統合失調症でも初期には全く見られません。しかしこうした状況が長期に渡り、「繰り返される」ことが問題なのです。
普通の人なら、見たくない物は見ないし、やりたくない事は簡単に不満や不平、あるいは拒否できるものです。
こうしたストレスの発散場所が見つからない、自分では見つかられない場合は、正常な人でも心身症で心も体も疲れるはずです。
その中に当然、疲れたためにうっかり忘れる健忘もあるでしょう。ですが、中にはそうした嫌なことは人は大抵、長くは覚えていないものです。
ところが統合失調症の場合は、強烈なくらいに「出来なかったこと」とか、「印象的な出来事」をよく覚えています。
言ってみれば、頭の中は常にそのことで一杯だと言えるでしょう。何気ない一言や些末な行動でさえも、それと関係があるかのように感じるようになるのです。
こだわりが強い分、それがやがて想像となって、現実と照らし合わせて物事を捉えるようになったのが、「妄想」です。
心身症の長期にわたる負荷が、統合失調症に与える影響は大きく、急性期になった統合失調症の場合は、一時記憶でさえも認知が不確かなものになります。
些細な事が「監視されている」とか、「いつも盗まれる」といった妄想で支配されるなら、日常生活で普段は使う一時記憶はもう働かないでしょう。
精神障害とは、「考え方」の流れが人とは違っています。
しかし、もう一度複数の事柄を一つに絞り、非常に単純な思考に戻すと統合失調症は回復の可能性が出てきます。
同時に、記憶障害も元に戻る場合が多いのです。
スポンサーリンク